物
観のレビュー
総合
結論
「殺し屋の女子高生」。その組み合わせの妙だけで勝ちだが、キャッチーな設定にとどまらない。
アクションは驚くほどリアルで迫力がある。その直後に彼女たちは「お腹すいたね」と言い出す。
突飛なアイデアを現実につなげるには、必ず「日常の文脈」を差し込む必要がある。
良かった
引っかかった
「殺し屋の女子高生」。その組み合わせの妙だけで勝ちだ。
しかし、ただのキャッチーな設定にとどまらない。積み重ねられていく日常の“軽さ”と、殺しという仕事の“重さ”の奇妙な共存に、観るものの想像の裏切りと面白さがある。
シリアスなアクションシーンは、驚くほどリアルで迫力がある。そこに漂う緊張感は、ハリウッドにも引けを取らない。だがその直後に彼女たちは「お腹すいたね」と言い出す。
残酷さの直後に、何気ない会話が平然と差し込まれる。その対比が観る者の感覚を狂わせる。まるで、日常と非日常の境界線を意図的に溶かしてしまうかのように。
「殺し屋」という非日常のファンタジーにも関わらず、彼女たちは「殺し屋らしさ」よりも女子高生らしさを持つ。バイトに行くのが面倒、将来が不安、友達付き合いがうまくいかないーーそんな等身大の悩みを抱えている。そのシニカルさが、アイロニカルさが心をくすぐる。
ジャンルに括ればコメディなのかもしれないが、コテコテに大袈裟に笑わせようとはしてこない。生活感とファンタジーのちょっとしたズレから自然に生まれるユーモア。声を上げて笑うというより、思わずニヤリとしてしまう。
その「じわじわ感」がクセになり、気づけば作品世界に取り込まれていく。
あえて定義するなら「非日常の日常系」。銃撃戦という非日常と、コンビニ弁当を食べながらの会話という日常。その両極を一つの時間軸に並べて、継ぎ目なく繋げてしまうことで、新しいリアリティが立ち上がる。
「突拍子もない設定」と「自分が知っている日常」の両方を同時に突きつけられると、不思議な納得感を覚えてしまうのかもしれない。ファンタジーにも関わらず、現実感を持って受け止める。この作品は、その心理の揺れを巧みに突いてくる。
ここで一つ気づくことがある。突飛なアイデアを現実につなげるには、必ず「日常の文脈」を差し込む必要があるということだ。一方で、あまりにも日常に寄せすぎると、ただのリアリズムで終わってしまう。非日常と日常、そのギャップをどう繋ぐかが、新しいリアルを生み出す。
『ベイビーわるきゅーれ』は、そのバランス感覚を極限まで研ぎ澄ませている。とにかく、めちゃくちゃ面白い。最後まで淡々とマイペースに進む世界に、いつの間にか魅了されていく。不思議な魔力のある作品だ。
採点
総合