観
観のレビュー
総合
結論
あまりに静かで、あまりに激しかった。四人の姉妹は全員、どこか壊れている。
父の不倫を発端に積み上げてきたものが崩れていく。その崩れ方が硝子細工のように繊細で痛い。
観終わったあと、しばらく言葉が出なかった。見たくなかったものを、ちゃんと見せてくれた。
良かった
引っかかった
是枝裕和が再構築した『阿修羅のごとく』は、あまりに静かで、あまりに激しかった。
登場するのは、四人の姉妹。演じるのは、宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず。全員が、どこか壊れている。そして、それが美しい。自分の人生に少しずつ歪みを抱えながら、それでも懸命に「家族」をやっている。誰もがどこか傷ついていて、でもその傷を誰にも見せたくなくて、代わりに言葉がとげとげしくなる。行動がすれ違っていく。
父親の不倫という出来事を発端に、彼女たちが積み上げてきたものが、じわじわと崩れていく。その崩れ方が、まるで硝子細工を指でなぞるように繊細で、破片が刺さるように痛い。この作品の恐ろしさは、日常の中にある。人はどうして、愛している人にこそ、きつくあたってしまうのか。言葉にしない思いが、相手に届かないまま積もっていく。そのズレが、やがて、関係を静かに壊していく。
“ドラマ”というより“記録”に近い。冒頭から最後まで、爆発音は一切しない。だけど、心の中でずっと何かが燻りつづける。是枝裕和のレンズは、説明を拒みながら、静かに真実を写し続ける。目をそらせない。役者たちは演技しているというより、ただそこに“居る”。視線の動き、沈黙の時間、呼吸のズレ。そういう細部の積み重ねが、台詞よりも雄弁に感情を伝えてくる。
昭和という時代を纏いながらも、そこにある痛みや不満、諦めと執着が、いまを生きる人たちにも突き刺さる。静かで、重くて、でもずっと目が離せなかった。優しさも、諦めも、祈りも、全部が混ざって、家族の形になっている。誰もが誰かの「味方」であり、「敵」である。それが皆が真正面から向き合うことの少ない「家族」だと、この作品は語っている気がする。
感情を揺さぶられた。何かを言いかけて、でも飲み込んだ経験があるすべての人に、このドラマは届くと思う。観終わったあと、しばらく言葉が出なかった。たぶんそれは、この作品が、いま自分が見たくなかったものを、ちゃんと見せてくれたからだと思う。
採点
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